足る事を知る・サントーシャ
2013/05/02
最近、娘といろんな所に行って絵を描いて帰ってきます。
主に特急や新幹線で一時間くらいで行けるところが手軽で、休日の楽しみにもなっています。
この前は水戸の近くのひたち海浜公園というお花がいっぱいの公園に行きました。
チューリップの時期でした。とってもきれいで目も心もピカピカです。
今回は、ヨーガの教えの中から「知足」、についてをお話します。
足る事を知る。
「サントーシャ」、と言います。
人は、なにか足りないような気がして生きていることが多いですね。
それは、とても日常的に、無意識の行動に現れます。
たくさん食べ過ぎてしまったり、必要のないものを欲しがったり、今のそのままの自分・または人を認められなかったり。
「サントーシャ」の教えは、ヨーガスートラの第二章、ヨーガの八支分の中の「ニヤマ」という、「こういうことを心がけて実行するといいよ」という勧めの中で与えられる叡智です。
私はこの「サントーシャ」の教えは、いつも光って見えます。
いつでもこの項をひも解けば、自分自身の源流につながりなおし、自由を感じます。
この物質世界の「現れ」、つまり私たちが「現実」と呼んでいるこの世界を、
ヨーガの思想では「プラクリティ」もしくは「マーヤー」といい、
「幻想」としてとらえます。
この現実は、とてもリアリティがあるように感じていますが、実は「まぼろし」なんですね。
「まぼろし」を「リアル」たらしめているのが、肉体の感覚器官である五感と、心という器官です。
ヨーガの世界では、「心」は「器官」なのです。
「心」は、鼻や目や口や耳や皮膚といった肉体の器官と連動して働く「器官」です。
器官には必ず役割があります。
「心」が、どういった役割の器官かというと、
このマーヤー(幻想)の世界をリアルに体験し、感じるための器官です。
器官なので、使いたい時にうまく働いてくれればいいのですが、
私たちはこの心という器官に働いてもらってるはずが、器官の働きに意識を乗っ取られているようなものです。
嬉しい・悲しい・むかつく・気持ちいい・楽しい・つまらない・くやしい・ウキウキする・美味しい・まずい・ほしい・ほしくない・痛い・寒い・温かい・怖い・好き・不愉快・・・
などなど、
気分や感情、感覚が捉える快不快と、自分自身を「同一視」してます。
嬉しかったらあたかもその「嬉しい」が自分のような気がするし
悲しかったらあたかもその「悲しい」が自分のような気がするし
お金もちだったらあたかもそれが自分のような気がするし
容姿がよかった、それが自分のような気がするし
そういった、物事の一時のかりそめの状態(「グナの特性」と言います)を、「自分」のように思い込むんですよね。
なので、「快」を失った時にショックだったり、「不快」を遠ざけようとしたり、変化を怖れたり、または求めたりします。
そして現状をコントロールしたい、という欲望が生まれます。いわゆる煩悩です。クレーシャ、と言います。
意識の在り方の主導権を、上記のような「心」という器官のもたらす作用に全権を渡している状態を「無知」と言いますが、心よりももっともっともっと奥のほうに座す「真の自己」(プルシャと言います)に帰還していくのが、ヨーガの目的であり道です。
ヨーガとは、
この「心」という器官の働き(チッタ・ヴリッティと言います)を、
止めようじゃないか、という提案なのです。
そのために、まずは心の作用をコントロールして、手綱を自身で握っている状態を練習します。
ちなにみ、ヨーガの考え方(サンキヤ哲学)では、「心」も「物質」なんです。
「心」は、プラクリティという「物質原理(創造の現物質)」の中の「一時の現れ」という、「物質」です。
目に見える見えないに関係なく、この世界のすべての事柄は「プラクリティ」という物質原理がどういった条件付けになっているか、なだけです。
心も、心の作用も、「物質」なんです。
その心の作用という物質の密度がどんどん高まると、目に見える物質になります。
物になったり出来事になったりするのです。
それゆえに、「思ったことが現実を作る」んですね。
心の作用を止める(制御する)。
そうですね。急に完全停止は難しい。完全制御も難しい。
でも心をいう「気の移ろい」を司る器官を、ちょっとでもコントロールでき、
「真の自己」のできるだけ近くに自分自身の「心」を座らせてみましょう。
って、やっていくと、
無知
が晴れて来ます。
先ほどもちらっと出ましたが、ヨーガの思想では、このマーヤー(幻想)世界の物理的現象を「自分」だと思い込み、真の自己を知らない(忘れている)ことを、「無知・無明」と言います。
これは別に「愚か」って意味じゃないし、低く観てるわけじゃないです。
ただ人間というものは、肉体を持って生きている限り、ご飯を食べて排泄をし、男女の性別をわかちさらにそれを結合することで生殖して生きるものなので、
「欲」を通じた心の作用(思考・感情・感覚)に意識を乗っ取られるものなのですね。
ヨーガは、この「無知」から、元々の「真の自己=プルシャ」に戻って行く。
まず欲という心の作用から離脱し、
物質世界の「現れ」への執着から離脱し、
快・不快への執着も超え、
歓喜も越えて、
真の自己、『自由』(モクシャ、と言います)に帰還します。
それがヨーガです。
難しそうですか?
うん。
仮に難しかったとしても、「道」を見失わないように「ヨーガスートラ」には、段階を追ったステップや、ポイントが書かれています。難しくてもやり続けられるように。
そのひとつが、「サントーシャ。」
足る事を知る。
です。
ヨーガの道をピカーーーーーーーー!と照らす照明が、
サントーシャ。
だと、私は思っています。
ヨーガスートラの中には、「サントーシャ」は、ヨーガの八支分の「ニヤマ(勧行)」の中のひとつとして、自由(モクシャ)への大事なステップとして挙げられています。
これは、『我慢』を強いてるわけじゃないのです。
「もっと持たなくてはいけない」
という思いも、物質世界の「一時の状態」を本当の自分の要素だと思い込む「無知」から来ます。
「サントーシャ・知足」に心をおさめておくことで、「欲張る苦しみ」から解放されていきます。
欲張っている時って、「それを手にいれたら幸せになれる」と思っているのですが、実際はそれを手にいれても、満たされるのは一時だけで、さらなる別の何かへの欲求で、心の渇きは癒える事がないんです。
欲を満たせば満たすほど、苦しくなっていく。
またヨーガには、
「最低限必要なものだけ持って生きよう」
という教えもあります。
「不貪・アパリグラハ」、と言います。
これも前出の「ヨーガの八支分」です。
人生が複雑になって心が混乱する時、そこにはいつだって「欲」がからんでいます。
いつも緊張をしているような心のコンディションにも、「欲」が根底にあります。
そんな現代人の複雑に絡まった心と人生に、この「サントーシャ」は素晴らしいお薬です。
個人的に思うのは、
「足る事を知る」ということと、「自分のしていることを信頼する」というのはセットだと感じます。
自分を信じていないと、欲張るのですよね。
自分が今していることを「これでよし」と潔く思えないと、
「う~ん、これも足しておこうか」
「足りなかったらいけないからこれも追加して出しておこうか」
という迷い(ブレ)と、余計な力が生まれます。
この「ブレ」がない人は、定時までに仕事終えてズバっと帰ったりするものです。
・もうじゅうぶん効いているのに、なにか不安でもう一個ツボを押してみる指圧士。
・もうじゅうぶんアドバイスできているのに、満足してくれているか不安になり、もうひとつアドバイスを出すセラピスト。
・もうじゅうぶんお化粧できてるのに、最後にまたチークのせちゃう女たち。(笑)
・もうじゅうぶんお客さんは買う気持ちで商品を手にしてるのに、「絶対買って損はないですよ」と後押しする店員さん。
・もうじゅうぶん伝わっているのにもう一つ例題を書こうとする、この私(笑!)
そんな感じでですね、不足しているような気がして「最後にもう一個・・・」とくっつけたものが、完成度や美質を下げることって多々ありです。
「仕事」の美的バランスを崩すのです。
誠意をこめて仕事してれば、もうじゅうぶんやれているのですよ。
だからそれ以上に飾りをつけないで、ざぱっと自信を持って行こう。
追加でなにかくっつけると、野暮ったいのです。
ご飯と納豆とみそ汁!
以上!
それでいいじゃない(笑)。そんな日も素敵。
絶対にもう一品作んなきゃ食卓は成り立たない、というような気持ちをゆるめて、これでも楽しんでいただけばいいわけです。
その楽しみ方のセンスを磨こう。
エンジョイライフ。その秘訣は、
サントーシャ。
「自分のしていること」に、飾りや添加物を足すのをやめてみよう。
素のままが一番おもしろくておいしいのです。
今日はそんな感じです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
この記事を最後まで読めたあなたは!
ぜひヨーガスートラのワークショップに来てくださいませ。
きっと何かきらっと光るものを持ち帰ることができるのではないかと思います。
<5月・師岡絵美里のワークショップ>
『はじめてのヨーガスートラ教室 ~入門編~』
5月18日(土)
9:10-10:50(100分)大森店
☆最初の30~40分ほどヨーガスートラをひも解く座学をします。
ヨーガの思想に触れてから体を動かすと、とても心がスッキリしますよ。
「サイレントヨガとワンネス瞑想」
5月25日(土)
9:15-10:45(90分)大森店
☆いろんなワークショップやってますが、最終的にはこのサイレントヨガから与えられる自己洞察へと還っていくなあといつも思いながらやってる、私のホーム的なワークショップです。沈黙を楽しみましょう。
詳しくはLAVA大森店のページへどうぞ
銀座の自然派カレーの「ナタラジ」が大好きな私と娘っこ。
よい初夏をお過ごしください。清き心で。
ナマステ〜♪
師岡絵美里