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日本でもヨガを実践することが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外である、心や思考に作用する「ヨガの教え」に興味を持つ方も増えています。

この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちが解説していきます。

さぁ、ここから第2章がはじまります

今まで、ヨーガ・スートラの第1章『サマーディ・パダ(三昧部門)=ヨガの目的とゴール』について、学んできました。

今回からは、ヨガのポーズはもちろん、あらゆる角度からヨガを実践的に取り入れていく、第2章『サーダナ・パダ(実習部門)=ヨガの実践方法』を読み解いていきます。

第2章1節
タパハ ソヴァーディヤー イェーシュヴァラ・プラニダーナーニ クリヤーヨーガハ
タパス ソヴァディヤーヤ イーシュワラ・プラニダーナーニ。
この3つがクリヤー・ヨーガ(生き方をヨガにすること)です。

ヨーガ・スートラ(やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガ・スートラ参照)

日常生活の中で、ヨガをするとは?

第2章では、第1章で学んだ「ヨガの目的とゴール」をより効率的に、かつ具体的に学べる練習・実践が紹介されています。

ここで言われる「ヨガ」とは、皆さんがヨガと聞いてイメージするアーサナ(ポーズ)の取り方のことを詳しく説明していることとは少し違い、誰でもどこでも取り組むことができる、日常生活の中で行えるヨガについて書かれています。

日常生活の中で行えるヨガも実践することにより、アーサナ(ポーズ)をより安定で快適に取ることができるようになるとも言われています。

では早速、第2章1節を理解するうえで大切なキーワードとなる『クリヤヨガ』についてお伝えしますね。

クリヤとは『行い』のこと

この『行い』には歩く、話す、食べる、仕事をしたり、運動することなどの物理的な行動だけでなく、考えたり、泣いたり、笑ったり、怒ったりなど、思考や感情も含まれています。

私たちは生まれてから毎日のようにカラダを動かし、考え、また行動し膨大な回数の「行い=クリヤ」をしていることになります。

日常生活の中で行われるこのすべての「行い」そのものをヨガ的にする『クリヤヨガ』をしながら生きようと説かれているのです。では、アーサナを取るのでなく、日常生活の中でヨガをするとはどういうことでしょうか。

日常生活の中でヨガをするために意識する3つのポイント

スタジオやマットの上以外で、ヨガをするために『クリヤヨガ=ヨガ的行い』を実践するには、何を意識すればいいのでしょうか?

それは、ヨーガスートラの中でも紹介されている3つのポイントを押さえることと教えられています。

1.タパス(規律)
2.スワディヤーヤ(聖典読誦)
3.イーシュワラ・プラニダーナ(祈念)

 

この「タパス、スワディヤーヤ、イーシュワラ・プラニダーナ」のサンスクリット語(インドの古代語)だけを見ても何だかよく分かりませんよね。

ヨーガ・スートラは元々口伝(口頭で伝えること)で残されてきたものなので、短い言葉の中に深い意味が込められています。それではどんな意味が込められているのでしょうか?詳しく見てみましょう。

1.タパス(規律)
社会的ルールや規範のことではなく、自分を律して毎日を暮らすこと。規則正しい生活、程よく食べ、程よくカラダを動かし、無理をせず自分と向き合うこと。自分のやるべきことに心を尽くして行うこと。

2.スワディヤーヤ(聖典読誦)
聖典を通して本当の自分についての学びを深めること。『本当の自分』については、【連載】第9回やさしく学ぶヨーガスートラ:本当の自分は、自分の中心にあるでも触れられています。
本当の自分について学ぶことで、精神性を高めること。この世界で様々な経験をすることで、この世界にあるものを通して、本当の自分について学んでいくための繊細な感覚を高めておくこと。

3.イーシュワラ・プラニダーナ(祈念)
自然の摂理や宇宙といった大きな存在へ、捧げものをするように行いをすること。私たちが大きな存在に生かされていることを深く理解をすること。
その存在へ感謝し、自分の力の及ぶ範囲を越えたものには執着をせずにゆだねること。

日常生活をしながらヨガをすることは、何だか難しそうだな・・・と感じてしまった方もいるかもしれませんね。

複数の取り組みを1度に実践するのは中々難しいことかもしれません。例えば、ダイエットも色々なことを取り入れて無理をすると、リバウンドをしてしまいますよね。

そのため、新しいことを始める時には、シンプルに、自分ができそうなところから始めることをおススメします。

朝起きてから寝るまで。少しだけヨガ的に生きてみる

まずは、自分のできる範囲から『行い=クリヤ』をすることから始めてみましょう。
1日1つ~3つ、これを意識すると決めてから始めるのもおススメです。

例えば、自分の食べるもの、話す言葉、感じる感覚や浮かぶ思考に対して、行動をする前に少しだけ意識をしてみてください。

「朝ごはんはパンとコーヒーね」
「いつもより声を少し大きくして挨拶してみようかな?」
「日差しが強くなったなぁ」

なんでもよいです。

何か気づくことがあれば、その感覚を丁寧に観察してみましょう。

どうしてそう感じたのか?そう思ったのか?それが、繊細に意識を向ける、日常生活の中でヨガを取り入れていく練習になります。

そして意識を向けることに慣れてきたら『クリヤヨガ』の1つをテーマにして意識を向けてみるのも良いかもしれません。

例えば、

1.タパス(規律)=規則正しい生活の実践

・早寝早起き、食事は腹7~8分目にする
・仕事や家庭生活においてやるべきことは頑張り、無理はしない
・行動、言葉、心に繊細に意識を向けて慎重に『行い』に移す

実践をしてみて何か気づくことがあれば、メモに残すのもおススメです。

例えば、朝目が覚めた時にとてもスッキリしていたとします。どうしてだろう?と考えてみる。いつもより早く寝たからかもしれないし、夕飯に消化に良いものを食べたからかもしれません。

自分に向き合えば、自分にフィットしている生活スタイルを自然に身につけることもできます。

2.スワディヤーヤ(聖典読誦)=繊細に意識を向けるための学びや自分に没頭できる時間を持つ

・世界、宇宙、人間について掘り下げてテーマにしている映画や小説に触れる
・写真や美術作品の鑑賞
・瞑想または目を閉じて呼吸に意識を向ける時間を作る

もしピンと来なかったら、自分の心の中が静かになるようなものにふれて、何かに没頭できる時間を作ってみましょう。ただ何も考えず空を眺めてみるのも良いです。

私は美術館や写真展に出かけて、気に入った作品をぼーっと眺めることがあります。

作品について「どうしてこれはこのタイトルなんだろう?」など考えるのでなく、ただその作品に没頭していると不思議と自分の内側を見ているような気分になるからです。

そうした心が静かになる時間を持つことも『本当の自分』に気づく方法かもしれません。

3.イーシュワラ・プラニダーナ(祈念)=日常生活の中で自然に触れる

・通勤や通学、近所を散歩する際に、街路樹などの自然に目を向ける
・夜空を見上げて月や星を観察する
・花を飾る、植物を育てる

例えば、通勤や通学途中に美しく咲いていた桜が散り、いつの間にか葉が青々と色づいていることに気づいたことはありませんか?

身の回りにある小さな自然から大きな季節の移り変わりを感じることもできます。また星座について詳しく知らなくても、夜空を見上げることを意識していると、星の配置が変わっていることに気づいたり、月の満ち欠けの変化に、宇宙の壮大さや神秘性を感じることもあるでしょう。

日常生活の中で少し周りに目を向けるだけで、自然や宇宙といった大きな存在に生かされていることへの感謝を実感できるかもしれません。

様々な意識するポイントを挙げてきましたが、難しく考えなくても大丈夫です。

まずは最初にお話ししたように、自分のできる範囲で、できるところから毎日何気なく行っている自分の『行い』を意識的にすることから始めてみましょう。

今この瞬間、自分がしていることを『やさしく観ていく』こと、つまり『無意識にしないこと』が大切なのです。

『無意識を意識的にする、今この瞬間に意識を向ける』これが、ヨガ的生き方につながる第一歩です。

そうすれば何気なくしている『行い』が変わり、毎日がより鮮やかに感じられるようになるかもしれませんね。

 

【連載】第1回やさしく学ぶヨーガスートラ:「今」に意識を置くということ

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