日本でもヨガを実践することが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外である、心や思考に作用する「ヨガの教え」に興味を持つ方も増えています。
この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちが解説していきます。
手放すことで得られる「心」がある
前回の【連載】第6回やさしく学ぶヨーガスートラ:本当の自分を知ることで心穏やかになるでは、心ではない自分自身【本当の自分】について、を学びました。
そこで今回は、自分自身に備わっている【心】とは、そしてその【心】との付き合い方に触れたヨーガスートラの一節を読み解いていきましょう。
第1章37節
ヴィータラーガ・ヴィシャヤン ヴァー チッタン
こだわりを手放し、欲望の対象から自由になることでもまた、静かな心でいることができます。ヨーガ・スートラ(やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガスートラ参照)
「こだわり」と「個性」の境界線
普段の生活で「○○しなくては」という想いや、こだわりはいい方向に働くこともあれば、ときには強い欲望や執着に変わることがあります。
たとえば、「絶対に○○を成功させたい!」という、想いなどはよく体験する感情です。
自分の中だけで、強く想っていることもあれば、この強い想いが、知らず知らずに自分だけではなく、周りにも伝わり、影響を与えているとしたらどうでしょう。
ヨガの哲学の中では心を痛める原因の1つとして「強い想い」や「自分へのこだわり」があると言われています。
喜怒哀楽、さまざまな感情を含め「自分の中の強い想い」は、私たちのひとり一人の個性ともつながっていることもあり、大切にしたい感情や想いのひとつです。
では、その感情とどう向き合っていけばいいのでしょうか?
「しなきゃいけない」の感情との距離感
この感情との付き合い方に関して、私自身が体験したことをひとつの例としてご紹介します。
私は20代の頃、なりたかった美容師の職に就き、夢中になってその仕事に打ち込んでいました。
憧れの職業でもあり、やりがいをもって毎日楽しく、お客様の喜ぶ顔が見れるだけで幸せ!と、夢中になって仕事をしていました。
しかし、だんだんと時が経ち、仕事に慣れてくればくるほど、美容師という仕事ができているだけで満たされていた感覚から、どうしたら美容師でいる私は幸せになるのか、美容師だからこうでなければいけないのでは、と考える時間が増え、なんとなく心が窮屈な状態を感じていました。
そしていつの間にか自分自身がやらないと「お客様が離れてしまうのでないか…」、「うまくお店を回さなきゃいけない…」など。私が美容師でいるための条件を設定しているような状態になり、美容師になりたての頃の気持ちが少しずつ薄れていました。
当時はそのことに気づかず、自身がすべきことだと想い、みんなを巻き込んでいたことも。その後、ヨガをはじめ、ヨガ哲学を勉強していくうちに、いろいろなことに気づけるようになりました。
今、そのときの感情を振り返ってみると、お店のために、お客様のために「●●しなきゃ」という感情は、お客様が離れてしまうことは「自分が傷つくから」、お店を回せないと「自分が嫌われるから」ではなかったかなと思います。
自分の気持ちや感情のど真ん中にいると、見えないことがたくさんあります。
今の状況や感じている感覚から離れてみて、客観的に向き合ってみると、本当の自分の気持ちに気づけるようになります。
何にエネルギーを注いでいきたいか
私たちが生きる上での課題は、人それぞれです。
心やカラダを持っている以上、さまざまな感情を体験します。
また、これらの感情を経験できることは、私たち人間に与えられたプレゼントだとも言えます。
その感情を無理に手放すのではなく、まずは自分の気持ちや感情の変化に気づくことからはじめてみましょう。
そして、自分自身に問いかけてみてください。
その感情の中で、自分はどこにいるのかな?と。
気づけることだけでも少し楽になるかもしれません。
心と向き合い、心と感情の距離を知ることで、心は前よりも穏やかになるはずです。
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