日本でもヨガを実践することが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外である、心や思考に作用する「ヨガの教え」に興味を持つ方も増えています。
この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちが解説していきます。
「好き」と「嫌い」が苦しみの原因!?
第2章7節
スカ アヌシャイー ラーガ ハ
喜び・楽しみを強く望み、執着する考えがラーガ(欲望、執着)です。
ドゥッカ アヌシャイー ドゥヴェーシャ ハ
苦悩をもたらす考えがドゥヴェーシャ(嫌悪、苦しみ)です。ヨーガ・スートラ(やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガ・スートラ参照)
皆さんは「好きなもの」「嫌いなもの」はありますか?
食べ物や人物、動物、場所・・・なんでもいいので想像してみましょう。
何か思い浮かぶものはありましたか?対象は色々あると思いますが、目の前にあるものや出来事に対して、何となく「好き」「嫌い」の感覚を基準にして区別をつけていませんでしたか?
例えば・・・
暑いのが嫌い!虫が苦手!海が嫌い!
山が好き!甘いのが好き!犬が好き!
こんな風に日常生活の中には「好き」「嫌い」が溢れています。
人間には楽しい、切ない、悲しい、苦しい、嬉しいなど、様々な感情があり、一見複雑に見える人間の感情ですが、深堀りしていくと、大きく「好き」「嫌い」に分けられているといいます。
「好き」も「嫌い」も行き過ぎると苦しみの原因に
そして、この「好き」「嫌い」という感情は決して悪者ではありませんが、行き過ぎてしまうと、「好き」は執着に、「嫌い」は嫌悪となって私たちを苦しめる原因になってしまうのです。
例えば、朝から晩までスマートフォンを片手にしている人がいます。
SNSを見る、行きたいカフェを検索する、好きな映画を見る、ゲームをする、好きな人と連絡を取る。
その人にとって、スマートフォンは沢山の情報を与えてくれて、楽しませてくれる大好きな存在。今やスマートフォンは多くの人にとってなくてはならない存在ですが、その大好きなスマートフォンが突然なくなってしまったらどうでしょうか?ちょっと想像してみてください。
スマートフォンがないと不安でしょうがない
スマートフォンを持っていないと落ち着かない
こう思っている自分に気づく瞬間があるかもしれません。
「好き」という感情に振り回されずに一歩引いて見ている状態や、スマートフォンに「依存をしている」ことに気づくことができたら、それは苦しみではありません。
「依存している=執着している」というのは、それがないと幸せになれないと気づかないうちに思ってしまっている状態です。心を満たすものがなくなった時に執着が生まれ、「好き」が苦しみになるのです。
「好き」という感情は一見楽しいだけに思えるかもしれませんが、行き過ぎてしまうと「好き」という感情に、自分が縛られていることがあるのです。
これがラーガ(欲望、執着)から来る苦しみです。
嫌なものから距離を置くことも苦しみの原因!?ドゥヴェーシャについて
嫌いなものは避けたい
嫌なものから逃げたい
これはつまり嫌いな物事をずっと考えている状態です。
過去のネガティブな感情や経験に引っ張られて、何かを見たり、食べたり、その場面に遭遇したりすると「これ、苦手だな」と思ってしまう経験がある方もいるでしょう。
例えば、昔よく怒られた学校の先生に似ている人に会ったら、その人を知らないのに、どこか嫌な感じが沸き上がってくる、とか。
すごく楽しく過ごしていたのに、苦手な食べ物や香り、その場所や時間が一気に苦手になったり。
初対面であればまっさらな意識で迎えることもできますし、もしかしたら苦手な食べ物も食べたらおいしいと感じるかもしれないのに、過去の経験が、正しく見ること(正見)を、邪魔することがあります。
良い感覚だけを得たい
好きなものに囲まれたい
これはやりたくない
「好き」を追い続けると執着となり、苦しみを生み、嫌いなものを避けたいという感情がずっと心を支配していると、それはやがては憎しみや嫌悪に変わり、「嫌い」も苦しみに変わります。
ラーガの「好き」、ドゥベーシャの「嫌い」の根本原因も「本当の自分」という真実を知らないという無知から来ると言われています。
たまには「何もしない」をしてみよう
「好き」や「嫌い」は実はとっても曖昧なものです。
一瞬のうちで、好きだったものが苦手になったり、苦手なものが好きになったり。曖昧なものだからこそ、この2つの感情に支配されないことが大切です。
日々の生活は一つひとつの行いが小さな「チョイス」の連続ですが、知らず知らずの間に「好き」「嫌い」で判断することもあるのではないでしょうか?
もしそこに疲れてしまったり、苦しくなったら一度その「好き」「嫌い」の対象と距離を置くことをおススメします。
例えば、葉っぱの上の雫の行方を追ってみたり、
おうちの中でもベランダから雲の形を見てみるだけでもいいかもしれません。
お休みの日に余裕があれば、海に行って素足で砂浜を歩いてみたり、波の音に意識を向けてみる。
もしくは、山に行って鳥のさえずりに耳を傾けてみるのも開放感があるかもしれません。
無理に何かをしようとせずに、ただ時の流れに身を任せてみる。
そうすることで何か新しい発見が生まれたり、自分の感情に気づくことができたり、「好き」や「嫌い」に振り回されている自分と距離を置くことができるかもしれません。
現代人は便利なものに囲まれることで「好き」「嫌い」はさらに多くなりやすいのです。
便利さに囲まれているはずなのに、感情や人間関係でなんだか不便だなと感じるとしたら、知らずに本来の豊かさを遠ざけているのかもしれません。
本来は私たち人間も自然の一部です。
「好き」「嫌い」に振り回されて不便さを感じた時は、自然近くに寄り添うことで、苦しみが少し穏やかになるかもしれないですね。
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