日本でもヨガをすることが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外の、心や思考に作用する「ヨガの教え」に対しても興味を持つ方が増えています。
この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちが、リレー形式で解説していきます。
ヨガを通じて、心と自分自身の関係性を見つめ直す
「【連載】第1回やさしく学ぶヨーガスートラ:「今」に意識を置くということ」でご紹介した『ヨーガスートラ』第1章2節では、ヨガの目的を示していました。
ヨーガスチッタヴリッティニローダハ(ヨガとは心の反応を収めることです)
起きたできごとに対して反応し、波立ちを続ける私たちの心。その心の波立ちを穏やかにすることがヨガの目的です。
では、なぜヨガをすると心は静かになるでしょうか?
『ヨーガスートラ』にはそのメカニズムと、具体的にどう行動すればよいかが丁寧に示されています。今回は、心と自分自身の関係について語られた文章をみていきましょう。
第1章4節:ヴリッティサールピャンイタラッタ
(心の反応を収めないと、心と自分自身を混同し、苦悩するでしょう)出典元:ヨーガスートラ
「心と自分自身を混同するってどういうこと?心=自分なんだから混同も何もないでしょう?」…と思った方もいるかもしれません。
そこで次は、心と自分自身の関係性について、私の実体験もふまえて、わかりやすくご説明していきます。
心の変化に一喜一憂するのではなく心の変化を「楽しむ」
先日、出張帰りの新宿駅で私は携帯電話を無くしました。直前まで持っていて上着のポケットに入れたはずなのに、いくら探しても見つかりません。どうやらポケットからすべり落ちたようです。
出張帰りの疲れもあり、イライラして不幸のどん底のような気分になりました。もう見つからないかもしれないと諦め半分で交番に問い合わせると、「さっき届きましたよ、携帯電話」という答えが。
日本一利用者が多い新宿駅で、無くした物がすぐに見つかるなんて、自分はなんてラッキーなんだろうと、落ち込んでいたこともすっかり忘れていました。
そのとき、「私の心ってあてにならないな」ということを感じました。
さっきまでは落ち込んでいたのに、今はもう幸せ。昨日まで嫌いだった人を、今日は好きになる。
人の心は移ろいやすいもの。苦しい、楽しい、悲しい、寂しい、幸せ、不幸…そんな風に変化し続ける心の動きを自分だと思って背負い込み、一緒に動き回っていると疲れ果ててしまいます。そして混乱し、本当の自分の目的がわからなくなってしまうのです。
「女心は秋の空」ということわざがあるように、空の色はめまぐるしく変化し、天気も変わります。でも、空そのものは変わらずそこにあって変わらない、それが自分自身です。
そんな変わらない自分自身を知っていると、秋の空模様のように変化する心の動きにも一喜一憂することなく、その変化を楽しむこともできるのです。
これらのような自分の心に振り回され過ぎないように、変化を楽しめる余裕を持てるよう、心のハンドルを自分自身で握る練習、それが「ヨガ」です。
1分間目を閉じて、自分の心を遠くから眺めてみてください。
心を休める、簡単な瞑想タイムです。
本来の自分自身のあり方が見えてくるかもしれません。
出典:LAVA Life Vol.31
監修:Yumiko
ヨガスクールFIRSTSHIP講師
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